火曜日, 3月 28, 2006

グンダ、若かりし日の物語

ちょっと見直したら文章がこなれてないんじゃよ。まぁ、グンダじょうちゃんらしいというかなんと言うか。
少し手直ししてみた。 セカンドエディションじゃね。


Paragon Daemon

その日…
私がいつもと同じ様にイルシェナーの慈悲ゲートに降り立った時、何故かいつもは感じない不安を感じた。
なんと言い表せばいいんだろう? 空気が違う。
張り詰めた雰囲気。
養父がデーモン特効武器の手入れをし、包帯を丁寧にポーチに詰め込んでいるその場に居合わせたような…そんな感じ。でも私はそんなのは気のせいに過ぎないと自分に言い聞かせ、愛馬ヒューの馬首を返し、古代竜の巣の裏手…私が赤い巨大な悪魔との戦場に選んでいるちょっとした森に向かった。
明らかにおかしい。
普段はこの辺にラットマンアーチャーの矢がこんなに散乱している事は無い。誰かが苦戦してアーチャーをしとめた…もしくは仕留められた後かもしれない。
こんな激戦の跡を見るのは本当に久しぶりだった。嫌な予感が加速する。
いつも見慣れた戦場について、私とヒューの息を整える。
精神を集中してエネミー オブ ワンを発動…失敗。失敗。失敗。
さっきの不安はこれだったのかと一人苦笑しながら、ヒューを気ままに歩かせて気分転換をしながら詠唱を続けた。たまにあるよね、こういう事って。
オレンジ色の球体が私を囲み、少しだけヒューが脚を速める。
これは私と彼との戦闘開始の合図。
彼はすばやく木々の間を潜り抜け、鋭い剣先の如く獲物を探して駆け抜ける。
樹の上に角の生えた憎らしい顔が見える。軽く短槍を振り、ヒューと私に気合を入れる。
コンセクレイト ウェポン!
私の短槍はオーラをまとって敵の弱点に合わせた属性に変化する。これで私がデーモンを小突き回すと魔界からの来訪者は数合の後に沈黙する。
結構自信はあるんだ。
私は、負けない。
負けない、はずだった。普通のデーモンだったら。
いつもであれば数瞬で相手はよろめき、ヒューが息を整える間も無く次の獲物を仕留めにかかることができる。でも、奴は違った。
良く見れば体表には金色のオーラがまとわりつき、いつもは毒々しく見える赤い肌をそこはかとなく美しく彩っている。そして…さっき与えた傷が既に完治しかかってる!
ここに来て養父が出かける前に「最近イルシェナーが…」と語っていたのを思い出す。
とうさん、知ってたんだ…それもろくに聞かないで呪文で常設ゲートまで飛んだ事を後悔する。普段は滅多に当たりもしない悪魔の一撃がとっても痛い。
久しぶりに敵と戦ってて涙が出た。とうさんの言う事聞いとけば良かった。
取り合えずヒューを走らせ距離を取る。このままじゃ殴り殺されちゃう。
なにか無かったか…何か…あ?もうっ! かあさんの言う事聞いてポーション常備しとけば良かった!
バッグの中をかき回していると小さな小袋が出てきた。随分前にとうさんがお守り代わりに持たせてくれた…あのとうさんが神頼みする為だけにこんなものを持たせる訳は無い。中身をまさぐると紫色とオレンジの花びらが出てきた。さすがに抜け目ないねとーちゃん!紫の花びらはトリンシックの騎士たちの勇気の詰まった薔薇の花びら。口にして甘く、そして戦意が心に呼び戻されてきたのを感じる。オレンジの花びらは敵からの毒を無力化する役割…とか聞いた気がする。
そうだ! なんかそんな事言ってた!
戦場で毒食らったからって慌てて武器を手放すな…だっけ?
落ち着けと。
毒はこれで無効化して落ち着いて相手を見て戦えと。
自分が積み上げてきたものを信じろ!確信を持って戦え!
修行時代から繰り返し聞かされたとうさんの教訓。
身にまとうはかあさんが夜なべして仕立て直した魔法の革鎧。
恐ろしいスピードで迫り来る悪魔を見据え、ヒューに気合を入れる。
「いくよっ! こっちは4人がかりだ!」
あ、なんかヒューの嘶きが投げやりだ。
こいつ私が死んで二人してゲートに走ると思い込んでる…勝つから! 倒すから! 私が死んでも貴方は絶対に無事で返すから! 間違っても私が気を失った後に勝手に敵に突っ込まないでよっ!
ディバイン フューリーでスタミナを回復し、最初にとうさんから習ったHit & Away式での戦闘を繰り返す。
「本当にヤバくなった時に、基礎を思い出せる奴が一番強い!」
確かにとうさんの言った事に間違いは無かった。敵からの攻撃なんて滅多に当たらないのでこんな戦い方と思ってたけど、これだとスタミナが温存できる。ダメージも少ない。
やっぱり基礎だねとーちゃん!
何度も何度も駆け抜けて、ようやく敵もヘロヘロになってきた。ヒューが興奮してきているのが判る。
最後の追撃は慎重に。勝ちを焦るな…だよね?
ヒューの手綱を引き、慎重に傷の手当てをして、再度エネミー オブ ワンを唱える。
ディバイン フューリーを唱える。
そしてコンセクレイト ウェポン!
後に聞いた話では、この金色のはパラゴンと言うイルシェナー独自のモンスター変異体なんだって。最近現れる様になり、イルシェナーのブラッド ダンジョンでは大規模な討伐隊が組織され、四六時中冒険者がバルロンを倒しているそうだ。とうさんはここぞとばかりに戦闘のコツについて独自理論を語り、かあさんは神妙な顔つきで鎧を修繕してる。とうさんもかあさんも鎧の傷の付き方で私がどんな風に戦ってきたか見当が付くらしい。だから冒険者夫婦って奴は…あ、もちろんデーモンパラゴンは倒したよ。冒険者夫婦の娘ですから!



このグンダじょうちゃんのお話はセラエノで販売中。高い方は彼女の経験にあわせて「お守り代わりの」トリンシックの花びらとオレンジの花びらを2枚づつ入れている。